【小説】誰かと誰かと私のあなた/恋愛部長 (1/13ページ)

ハウコレ

【小説】誰かと誰かと私のあなた/恋愛部長

【小説】誰かと誰かと私のあなた/恋愛部長

記念日は、嫌い。あなたの誕生日はとくに、嫌い。あなたと一緒にいられないから、じゃない。あなたが、誰かひとりといっしょにいるから。

■まちぼうけ

まちぼうけ

今日も、彼は、来なかった。来週は必ず行くから、と約束したのに。彼の職場の近くに借りたこの小さなアパートの一室に、彼は顔を見せることもなかった。

もしも、電話をくれたら、すぐにでも車で迎えに行って、彼の家でも、どこへでも、送って行くことだってできるのに。たとえそれが深夜だろうが、明け方だろうが。

望海はそんな風に考えて、ため息を吐く。

小さなアパートの部屋は、テレビをつければ、それだけで空間がいっぱいいっぱいになってしまうほど狭い。先ほどから何が面白いのかさっぱりわからないお笑い番組が流れていて、すぐに熱がこもるこの部屋の空気を余計暑苦しくさせている。

この部屋を借りたのも、すべては、佑(たすく)のためだった。

いつだって、「仕事が忙しい」、「今日も残業だ」、「飯も食えない」とメールを送ってくる佑に、少しでも休んでほしくて、職場から1時間もかかる社員寮に住む佑が立ち寄れるよう、わざわざ引っ越した。

もともとは郊外のアパートに住んでいた望海にとって、下町とはいえ都内にあるアパートは、小さいくせに家賃がかかって、肩に重く負担がのしかかったが、それでも、扉を開けて佑が姿を見せるたびに、そんなことはどうでもいいことだと晴れ晴れと思えるのだ。

ただ、1つだけ誤算があるとすれば、佑の会社に近い部屋を借りたせいで、思いがけず、佑がそれほど会社に残っているわけでもなければ、仕事が忙しいわけでもないことを知ってしまったことだ。

「【小説】誰かと誰かと私のあなた/恋愛部長」のページです。デイリーニュースオンラインは、恋愛部長の「ダメな恋ほど愛おしい」ヤリチン片思い不満失恋女子などの最新ニュースを毎日配信しています。
ページの先頭へ戻る

人気キーワード一覧