【小説】誰かと誰かと私のあなた/恋愛部長 (10/13ページ)

ハウコレ

サナエだって、佑の浮気に悩んでいたはずだ。佑がいない疑惑の夜を、たとえば望海を抱いているその夜も、苦しい思いを抱いて暮らしてきたはずだ。

サナエが、佑にとって本当の意味で特別ではないことは、その事実をもってすれば明らかではないか。

望海は、ようやく歩くのをやめ、ベッドにすとんと座り込む。

そうだ、サナエは、特別なんかじゃない。佑は、何人もいっぺんに付き合っている女の中の1人と結婚するだけで、きっと結婚後も行動を改めたりはしないだろう。サナエは、新妻になってもなお、ベッドで独り寝の夜を涙で暮らすのだ。

望海は、その発想にちょっとゾクゾクして、服のまま掛け布団に潜り込んだ。もしも結婚した佑が、またこの部屋に訪れたらどんな気持ちがするんだろう。その背徳的な考えは、たった一人で欲情するのに十分だった。

人のものになった佑。その佑の指が迷いなく自分の体に触れることを想像して、望海は興奮した。

どうにもならない。望海は、持て余す情熱の行方を探しながら、思う。自分は、本当に頭がおかしいのかもしれない。望海は、そう思いながら、シーツにうつ伏せに体をぴったりくっつけて目を閉じた。

■ずっと欲しかった、プレゼントの中身

プレゼントの中身

佑が再び顔を見せたのは、それから2週間後のことだった。もしや・・・・・・と左手の薬指を見たが、当然そこには何もなかった。サナエのインスタもあれきり更新されることはなく、山ほど贈られたお祝いのメッセージも宙に浮いたまま、何の返事もなされてはいなかった。

もしかしたら、あれは何かの間違いだったのだろうか。部屋の戸口に現れた久しぶりの佑の姿に、望海は、ふとそんな考えさえよぎった。

佑は相変わらず、仕事の愚痴を一方的に話して、望海の作った夕食を食べ、望海に差し出されたハイボール缶を何本か飲んで、ベッドに腰掛けて漫画雑誌をペラペラめくり始めた。何も、変わったところはなかった。

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