【小説】誰かと誰かと私のあなた/恋愛部長 (4/13ページ)
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恋愛部長の「ダメな恋ほど愛おしい」
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不満
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失恋
佑は、忘れるのがいやで、どこでも同じ暗証番号を使っているから、ロックを開けるのは簡単だったし、とくにケータイを隠す風でもなかったから、わりとすんなり中身が覗けた。
開けてみれば、メッセージアプリにも、メールボックスにも、SNSにも、いろいろな女とのやりとりが踊っていた。そこまでわかりやすいか、とあきれるほどに、生々しいやりとりがそこには残されていた。画像ファイルを見ると、見知らぬ女とのツーショットが何枚も出てきた。頬をぴったりくっつけて、自分たちを撮っている写真もあった。
どれも、佑だけれど、佑ではないようにも思えた。ケータイを静かに閉じて、望海は息を吐いた。
今までの疑惑の答えがあまりに簡単に見つかったせいで、なんだかかえって拍子抜けしてしまった。むしろ、答えが分かって楽になったような気さえした。
要するに、自分は、佑にとって、その他大勢のうちの一人だったのだ。ずっと、不思議に思っていたこと、引っかかっていたことがするすると解けていく。そうか、そういうことだったのか。
なぜだか怒りは感じなかった。妙に冷静に、納得している自分がいた。佑が、自分だけを愛しているわけではない、という事実は、確かにショックだったが、どこかで、「私一人だけで佑は満足するわけがない」と思う自分がいるのだった。
佑は、たしかに、執着のない男だった。あまり細かいことを気にしないし、望海がぐずぐずと不満を言っても、あまり気に留めていないようだった。どこか鈍感なのかと思っていたが、ただ単に、何人もの女に言われ慣れていて、どうでもよかったのだと思う。
でも、いつも「気持ちが重い」と言われて男に逃げられる望海にとって、どれだけ愛していても、尽くしても、ひるまずにさらりと受け入れてくれる佑は、貴重な存在だった。
佑は、たまにしか会えないけれど、会った時はとびきりやさしかった。