【小説】誰かと誰かと私のあなた/恋愛部長 (7/13ページ)
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恋愛部長の「ダメな恋ほど愛おしい」
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不満
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失恋
「どこかって? いま金欠なんだよな〜」佑はめんどくさそうに言う。
「ほら、お前の誕生日プレゼントも買わないといけないじゃん?」佑の言葉に、望海はパッと心に太陽が差したようになる。
「プレゼント? え、・・・・・・うれしい!」
佑に何かをもらったことは、実はない。クリスマスも会えなかったし、バレンタインのお返しも何もない。たまに気まぐれに土産と称して、たこ焼きだの、シュークリームだの、自分が食べたいものを買ってくるくらいだ。
好きな男が自分のために何かを買ってきてくれるという行為は、何よりもうれしい。花一輪でもいいから、もっとロマンチックな、そう恋愛中の男女らしいものを買ってきてほしい。誕生日にプレゼント。なんて素敵な響きだろう。
望海は、それだけでもう抱えきれないほどのプレゼントを贈られたような気持ちになって、話をそれきり切り上げた。誕生日の日は、出かけなくてもいい。2人きりで部屋でお祝いしよう。佑が来てくれさえすればそれでいい。望海は、佑に求められるままに体を開きながら、幸福な想像に胸を膨らませていた。
食事は、デパート地下で少し奮発してパーティー惣菜を買った。ケーキは、もしかしたら佑が用意してくれるかも? と思いながら、万が一ないと寂しいので念のため、近所のケーキ屋で小さな小さなホールケーキを買った。
部屋には、100均で買ったキャンドルをいくつか飾り、500円の花束を小さなプリンのガラス瓶に活けた。これだけで、部屋の中がポッと明るくなったようだった。
「今日は何時に来れる?」
急かしているように見えないように気をつかいながら、佑の就業時間にメッセージを送ってみるが、返事がなかなか来ない。
そわそわしながら、夕暮れの町を窓から見下ろす。ちょうど、佑が大きなプレゼントを持って、アパートの前に着いたところだったらいいのに。
そんな、ささやかな胸を膨らませるような期待は、いつもことごとく裏切られてきた。だから、だんだん何も期待しなくなった。期待しなければ、がっかりすることもない。
恋人が冷たいと嘆く友人の話は、ぜんぶ贅沢な話に聞こえる。