「すべてが便利でなくていい」京大・川上教授が研究する、世界をよくする「不便益」とは? (3/8ページ)

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でも、それがなぜ「不便だからこそ得られる益」という発想になったのでしょうか?

川上先生 師匠は工学系の研究をされていたので、工学に関するいろんな不便益を教えてくれるんですよ。その中で、自動車メーカーの組み立て作業に関する話がありました。

車の組み立ては「ライン作業」が一般的ですが、他にも「セル生産方式」という、一人、または少人数で一台の車を組み上げるものがあるんですね。

実際の組み立ては「ライン作業」の方が便利なのですが、作っている側からすると、手間の掛かる「セル生産方式」の方が「自分が車を作っているんだ」という気持ちになりやすく、責任感も高まりますし、スキルやモチベーションの向上につながるというのです。

この話を聞いたとき、「工学の研究でも不便益の発想を用いることができる!」と考えたのです。

――まさしく不便から得られる益ですね。

川上先生 使う側だけでなく、作る側も「便利にしないといけない」「便利なものではないと売れない」という常識にとらわれているのではないかと思います。不便益は、そこに対して、新たな角度からの視点を提案しています。

――先生は「便利であることが当たり前だという世の中が気持ち悪い」と著書※の中でおっしゃっていますね。

川上先生 今の世の中は便利になりすぎて、手間を掛けたくても掛けさせてくれません。そのチャンスがないのです。不便益の研究には、そうした「便利であるならそれでよい」という世の中に対して、一石を投じる側面もあります。なので「手間を掛けさせてくれる新しいデザインを探す」というのが大事になるのです。

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