「すべてが便利でなくていい」京大・川上教授が研究する、世界をよくする「不便益」とは? (7/8ページ)
――反対に、この研究のつらいところ、難しいと思うところは何ですか?
川上先生 論文になりにくいことですね。どんな面白いデザインのものが生み出せたとしても、「こんなのができました!」では論文にはならないんですね。ですので、HPで一生懸命にアピールしているのですが(笑)。
――他にはどんなことが挙げられますか?
川上先生 不便益の意図が全く通じないことがあります。例えば、腹筋運動を「苦しいけど筋肉が鍛えられる」。ひと駅前で降りて歩けば「しんどいけどいい運動になる」。このようなことを不便益と考えるのは、ちょっと違います。これらは当たり前のことです。「仕事もしんどいけど、お金がもらえるから不便益ですよね」って言われても、「そうだね」とは言えませんよね。
というのも、「何が不便益」で「何が不便益でないのか」の線引きが難しいからなのだと思います。
私たちが不便益を用いたデザインを考えるときも、こうした「当たり前」のラインで考えてしまうことがありますからね。線引きの難しさも、この研究を難しいと感じるポイントのひとつです。
――具体的な指針を出すことが大事になりますね。
川上先生 そうですね。不便益を用いたデザインの指針を、今一生懸命探しているところです。
不便益グッズによって多様性のある社会に――今後の目標や展望を教えてください。
川上先生 不便益を実装したものが世の中にどんどん出てきてほしいです。例えば、メーカーから不便益認定シールが貼られた「不便益認定製品」が出るといいですね。その結果、「手間を掛けさせてくれることの価値」をみんなが分かってくれるとうれしいです。