【小説】国芳になる日まで 〜吉原花魁と歌川国芳の恋〜第25話 (4/9ページ)

Japaaan

歌川国貞「今様見立士農工商之内商人」国会図書館蔵

「ごめんくだせえやし、旦那ア、旦那ア!」

国芳は青盛堂の屋標を染め抜いた大のれんを横目に土間に踏み込み、奥に向かって声を掛けた。売り子が慌てて、

「ヘエ、そんなに叫ばなくとも今旦那ア呼んで来やすからちょいとお待ちくだせえ」

売り子が奥に引っ込むと、入れ替わりで主人の加賀屋吉兵衛、縮めて加賀吉が出て来て国芳を見るや眉を開いて嬉しそうな表情をした。

「アラッ!マア!ちょいと!これはこれは!ちょいと!マア!お待ちしてましたよう!えーッと、どちら様でしたっけ」

国芳はひっくり返った。

「国芳です。歌川豊国が門人の歌川国芳」

ああっ、と加賀吉は手を打った。

「豊国先生のお弟子さん!エエ、ハイハイ!そうでしたそうでした。国芳さん。今日はいかがなさいました」

「豊国の父っつぁんが生前、わっちの仕事の事をその、なにか良いように言い含めていたと思いやすが、父っつぁんが死んで半年も経ちましたし、もうそろそろ何か良い話が沸いてくる頃じゃねえかと・・・・・・」

この通り画稿も幾つか持ってきました、そう言って国芳の取り出した画稿を加賀吉は受け取り、パラパラと捲って頷いた。

「ンー、確かにどれも良い絵ですねえ。ねえ、三助」

「あい!あい!」

せっかちそうな使用人の一人が、ブンブンと首を縦に振った。

「でも、うーん、今は旦那のこの元気な絵に見合う企画がなくてねえ。

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