【小説】国芳になる日まで 〜吉原花魁と歌川国芳の恋〜第30話 (11/11ページ)

Japaaan

 

「なあ、おみつ」、

 

国芳が優しい声音で語りかけた。

 

「家族って、何か知ってっか?」

 

「え?」

 

一瞬、岡本屋のお内儀や美のるや直吉、禿(かむろ)たちの姿が浮かんだ。みつにとって一番家族に近いものは彼らである。

 

「ちいとなら」

 

「家族はな、家族という本当の意味はな、『何をしても許せる』という事だぜ。父っつぁんがこないだ、そう教えてくれた」

 

「許せる・・・・・・」

 

「そう。例えばとんだ大罪人がいたとして、その母親だけはその子を許せる。たとえ倅が石川五右衛門だとしてもだ。そういうもんらしい。わっちゃアもちろん、おみつの事は何でも許せるてえ自信がある」

 

「ほんに?」

 

「ほんにさ」

 

「なら、安心した」

 

みつはふわりと笑った。

 

「わっちにゃア昔から提げているのがあるから、これはめえが掛けとけ」

 

しゃらりと、みつの細い首に銀の鎖がきらめいた。

 

「いいの?ありがとう」

 

「絶対無くすんじゃねえよ」

 

「約束する」

 

二人は少年と少女のように恥じらいながら小指を絡めた。

日本の文化と「今」をつなぐ - Japaaan

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