恋する、優しい瞳の花魁だ。
(一体どんな気持ちで、芳さんはこれを・・・・・・。)
傷は決して癒えていない。
彼の中には見えない痕が死ぬまで残るのだろう。
それでも今日のように、江戸に陽光が燦然と輝く限り、
(前に前に、進むしかねえ。)
拗ねても引っ掻いても、結局人というものは明日に向かう事しかできやしないのだから。
そうだよな。・・・・・・
「なア、紫野花魁」。
佐吉が絵に向かって親しみを込めて呼び掛けると、紙の中の花魁が懐かしいくしゃくしゃの笑顔で笑った気がした。
歌川国芳「風俗女水滸伝 九紋龍史進」大英博物館蔵
(了)
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