【小説】誰かと誰かと私のあなた/恋愛部長 (12/13ページ)
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恋愛部長の「ダメな恋ほど愛おしい」
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失恋
それ以上は望まない。自分は、佑にとっての下の下でいい。多くを望まない。
いっそ、人間でなければよかったのに。犬か猫だったら、ずっとそばにいて、かまわれなくても気にしなくて、ただ愛しているだけの存在になれたのに。
望海は、悲しい気持ちを振り払うように微笑むと、佑に言った。
「棚、うれしい。今度いつ見に行ける?」■サナエの結婚と、彼とのその後

結局、佑は、結婚することはなかった。
すっかり、サナエと結婚する佑に、都合よく扱われる女である自分、という妄想に酔っていた望海は、いつ結婚の話を切り出されるかそわそわしていたけれど、何ヶ月経っても、そんな話が出ることはなかった。
そして、10月の天気のいい大安の日曜に、サナエは結婚した。
サナエが結婚したのは、佑とは似ても似つかない、丸ぽちゃ童顔の歯科医だった。久しぶりに更新されたインスタで、2人がセブ島で結婚式を挙げる姿を見た。2人は幸せそうに、ビーチの結婚式場で、白くはためく布きれの中で笑っていて、数え切れないほどのハッシュタグがその横に並んでいた。
その中に1つ、#幸せってこういうこと というのがあったのが、目に焼き付いた。あれほど頻繁に更新されていたサナエのインスタは、それきり、ふっつりと更新をやめた。だから、その後サナエがどうなったのかは知らない。
佑のケータイからもサナエの名前は消えてしまった。
そういえば、サナエが結婚した日は、佑は望海の部屋でめずらしく深酒をしていた。その日が結婚式の日だったというのは、あとから振り返ってわかったことだ。妙に佑が酔っ払って絡んできたので不思議に思って覚えていた。
「どうせさ、みんな俺から去って行くんだよ。お前もな。いつか俺に愛想尽かして行くんだよ」そんなことを言っていた。
「そんなことないよ。いつまでも佑のそばにいるよ。」望海はそう言いながら、佑の頭を抱きしめた。