【小説】ひと夏の恋、永遠の恋。/恋愛部長 (15/16ページ)
ガラス向こうに、その人はいた。
手にケータイ電話を持っていた。しっかり和紗と目と目を合わせた。そして、口元にふっと笑顔を浮かべると、おもむろに彼はメッセージを書き足した。
その文面を見たとたん、和紗は狂ったようにガラスに駆け寄った。
「マサシ! 待って!!!」
マサシは、後ろ手に手を軽く振り、そのまま雑踏の中に消えて行った。和紗は、ガラスをダンダン!と叩いた。
「待って! マサシ! 行かないで!」
亮平があわててその腕をつかんで、やめさせるまで、和紗は、泣きながらガラスをたたき続けた。
足元に転がったケータイを、拾い上げて、亮平は和紗の手に握らせた。声を絞り出して泣き崩れる和紗を抱きしめて、亮平もまた、泣いていた。
「一生分の、キスを」
ケータイの画面に、白く浮かび上がった文字が、視界の端で揺れた。

「誓いの言葉を」
神父の声に、ハッと我に返る。和紗は、いま、最後に空港でマサシを見た時のことを思い出していた。あの時、どれほど苦しかったか。息ができなくて、胸をかきむしったか。放心状態で日本に帰国後は、何ものどを通らず、眠れない日々を過ごした。
目の前にいる亮平は、よどみなく誓いの言葉を口にしている。
和紗は重ねてつつましげに「誓います」と言った。亮平が、うれしそうなやさしい目で和紗を見る。
あの日、空港で踏みにじられたバラの花束にもめげず、亮平は帰国後も和紗のそばにい続けた。
その愛情を、疑ったことはない。だけど、・・・・・・和紗は思う。今でも、愛しているのは、あの男なのだ。
どうにもこうにも、あの恋は、自分の中から消せないのだ。たぶん、一生。
「誓いのキスを」
神父に促され、ベールを上げる。
亮平の顔が近づいてくる。和紗はそっと目を閉じた。