【小説】ひと夏の恋、永遠の恋。/恋愛部長 (11/16ページ)

ハウコレ

■秋、突然の再会

【小説】ひと夏の恋、永遠の恋。/恋愛部長気づけば、パリが1年でもっとも美しくなる季節、秋がやって来ていた。街を歩いても空気が冷たく、街頭で焼栗の焼ける香ばしい匂いが漂っていた。

会社のデスクに戻ると、事務の女の子が妙にニコニコしながら近づいてきた。

「カズ、あなたのボーイフレンドが来てるわよ。隣の部屋に」

ハッと心臓が掴まれたような気がした。たぶん、飛ぶように、部屋を出て行ったと思う。それくらい、心が跳ね上がっていた。

「マサシ!!」

ドアを大きく開けて、部屋に飛び込んだ。

彼は、隣の部屋の窓に向かったテーブルの椅子に腰かけていた。突然飛び込んだ和紗の勢いに押されて、飛び上がってこちらを振り向いた。

驚きのあまり、目を見開いて。何もかもが、一瞬で、彼には分かったようだった。

「かずさ・・・・・・」

亮平は、呆けたような顔で立っていた。

「突然、ごめん。出張でパリまで来て、それで、驚かせようと思って」

一生懸命笑顔を貼りつけて説明しようとする亮平を見ながら、みるみるあからさまな落胆が襲ってくるのを、和紗は感じていた。

なんと返事をしていいのか分からず、和紗はただ黙って、亮平の横の椅子に腰かけた。亮平は、必死でその場を繕おうとしていた。自分でも何かを打ち消したいという様子だった。

「いつぶり? 日本出る時も間に合わなかったし、あ、あんときはごめんな。仕事はどうなの? 順調?」

「うん、・・・まあ、なんとか」

和紗は、言葉少なに答える。正直、今さらどうしてここに亮平がいるのか、ちょっとわからなくて頭が混乱していた。

亮平とのことは、もうとっくに終わったつもりでいた。たまたま出張で訪れたから、別れた女に異国の地をアテンドでもしてほしいと言うのか。

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