【小説】ひと夏の恋、永遠の恋。/恋愛部長 (16/16ページ)
目を閉じればそこには、いつも広がる風景がある。
視界の続く限り一面の田園。夕陽の中で黄金色に輝く葉の1枚1枚。
その中にいるのは、誰?
本当に愛しているのは、誰?
一生分のキスを。誰よりも、ずっと、愛してる。
和紗は涙を流して、目を開けた。そして、ゆっくり首を左右に振った。
そうだ、消すことなんか、できやしないんだ。
どれだけ遠回りしても、きっと、想いは彼に戻って行ってしまう。
何度やり直しても、きっと、あの夏に戻って、私は、彼に恋をする。
和紗は、呆然とした表情で両手をおろした亮平に、背を向けた。
もう一度、帰ろう、あの場所へ。2度と手に入らなくてもいい。
あきらめと思い出だけで終わらせるには、人生はずっと長いのだから。
和紗の手からベールがするりと滑り落ちた。記憶の中で、海にキラキラと太陽が反射していた。
(恋愛部長/ライター)
(ハウコレ編集部)